2020-10-06 #翳目 かみしめて 咀嚼が好きだ。 「よく噛んで食べなさい」とはあまり言われずに育った。餅を喉に詰まらせて死ぬなといった程度の忠告しか受けなかった気がする。それよりも箸の持ち方を教える方に我が両親は尽力していた。 十代の…
2020-09-05 #翳目 酌に捧ぐ 俺は何だかずっと胸が張り裂けそうだよ。って囁くお前の額に万札ぐらいはくれてやる。アイスティーを飲んだ後の午後の夕立は不自然に柔らかかった。静謐に揺れる陽炎の中でお前だけがめらめらと燃えていたね、欠伸を…
2020-09-01 #翳目 ク・キュウ 九月に入った途端、夏の魂が抜けた。太陽も蝉も入道雲もクリームソーダもとしまえんもあの子の揺れるミニスカートも皆一斉に死んだらしい。夏が何処へ行こうが投身自殺を図ろうが引き留めやしないよ俺は。グッバイフ…