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Em11

品を作り、春を鬻ぐ、彼女の夢はこの国の冬を買い占めること。くたびれた体を湿ったベッドに横たえて、知らない男の腕の中で、卵の殻のように壊れやすい眠りを眠る。子どもたちは農夫のふしくれだった手を逃れ、市場…

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忘れる死

鈍重に歪みのかかった灰みたいな空とか、無鉄砲に光り散らかしやがる電飾とか、先端恐怖症患者の大量虐殺兵器みたいな氷柱とかが騒がしく胸壁を叩いたり引っ掻いたりする、冬が心底嫌いです。春の嘘みたいに腑抜けた…

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食餌

食べることが苦手である。「好きだけど苦手」という感覚は誰しも持っていると思うんだけど、至極それに近い感覚。 十年前に摂食障害を患ってからというものの、どうも真面に食事を楽しめない。 酒の席であれば自分…

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無頼と社員

仕事を一度手放して、大学院に入ろうかと考えている、という話を父親にしたら、ほとんど当惑した様子で、しかし結構はっきりとした言葉で反対された。眉間にしわ寄せて半ば目を伏せながら、少し首を傾げるあの仕草。…

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忘れてくれるなよ

『厭世詩家と女性』ときいたら俺は俺とあんたが並んで立ってるところを想像するよ。ずいぶん涼しくなった。結局あんたの前では一度も着なかった洋服に袖を通して、あんたの光のない目とか、体の輪郭のことを考えるよ…

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酌に捧ぐ

俺は何だかずっと胸が張り裂けそうだよ。って囁くお前の額に万札ぐらいはくれてやる。アイスティーを飲んだ後の午後の夕立は不自然に柔らかかった。静謐に揺れる陽炎の中でお前だけがめらめらと燃えていたね、欠伸を…

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アルコール

身体がアルコールを受け付けないというのは淋しいことだ。これまでの人生、いわゆる微酔というのを経験したことがない。常に素面か酩酊のどちらかである。飲み方が下手くそというのはあるだろうが、それにしても意識…

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エンターキーに馳せる

これでいて結構キーボードには思い入れがある。青春の半分をコイツに叩き込んできたのだから、否が応でも情が沸くというもので。いや、美談にするのはやめよう。率直に言えばめんどくさいこだわりがある。 キーボー…

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合言葉を決めようぜ

ごう‐びょう〔ゴフビヤウ〕【業病】 ・前世の悪業 (あくごう) の報いでかかるとされた、治りにくい病気。難病。 (デジタル大辞泉) ・前世の悪業の報いによって起こるとされる、なおりにくい病気 (精選版…

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爆破しよう、火薬なら担いできた

大蒜ベーコンブナシメジを菜箸ではなく普通の箸でジャーッと炒めて塩胡椒振ったところへ茹でたパスタを投入したものをフォークでもなくその普通の箸のままずるずる啜ってビールをぐびぐび飲んでいる、白目で。パンツ…