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忘れる死

鈍重に歪みのかかった灰みたいな空とか、無鉄砲に光り散らかしやがる電飾とか、先端恐怖症患者の大量虐殺兵器みたいな氷柱とかが騒がしく胸壁を叩いたり引っ掻いたりする、冬が心底嫌いです。春の嘘みたいに腑抜けた酸素がもう恋しい。スターバックスで抹茶とホワイトチョコレートの相性が良いことを生まれてこの方初めて知って、女子高生が同じものを頼むのを横目に当時の自分なら「この(指差し)フラペチーノをベンティサイズで・抹茶パウダーは多めで・ホイップは増量して」、等とやたら手間をかけた注文をしていたのだろうと思いながら、大人になるということは刺激に対しての感度が薄まっていくことだというのを身を以て知り得ているところ。幼児期の頃に一度だけ空飛ぶ雪車を見たことがあって、まあそれはもちろんただの夢か、或いはとうにインプットされてしまった儚い妄想なんだけども、実家のベランダ越しに見える星空が幻だったみたいに、今はこんな薄汚れた街で呼吸を繰り返すようになった。溜め込んだストレスを吐き出す息が白くなる。年末年始の騒々しさを吸い込む口が臭くなる。チルドで個包装された身体を引き摺るように生きている。師走は死を忘れるんです、半ば自殺行為みたいにして、嫌いな季節を部屋に迎え入れた。

翳目

酒と娯楽と文章が好きなだけ。

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