私は「全部」が良かったの。
って言うからあげた、全部。
自分が人よりも何倍、何百倍劣っているから「全部」渡してやったらこちらの取り分はゼロ、むしろマイナス、だけどまあ良かった。腐れ縁ながらも信頼はしてるから。
彼女は絹よりも肌が白くて聡明な人だった。不眠症がちで明け方よりも前に連絡を寄越すことが多かったけど、昼寝は気持ち悪くなるから嫌だと云って無理に身体を縦にして気張った。時には顔を顰めて一点を見つめ、しかし時には間抜けな表情で欠伸をした。だから、彼女が第三者視点から「何を考えているか分からない」と言われることには違和を覚えなかったし、私はそんな彼女と過ごす日々を愛おしくさえ思ったのだ。
私は今、存在していない。彼女の中に内包されているから。
世が善としていることの多くに対して首を振り、もしくは眠ったふりをして知らない風を気取る適当なペースが心地好かった。何も考えなくていいと思えるから。無知は個を失うのか?に対しての答えはノー。全部は私仕込み、イコール本仕込み。可も不可もメリットもデメリットも長所も短所もない、全ては古の私が寝言で作ったシナリオ。24年目を迎えて第何期?もう覚えてない。自分は自分以外の誰か(カプセル)を飲み込んで憑依された大道芸人。人体切断するあれのトリック、今日はもう少し起きて聞かせて。