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ク・キュウ

九月に入った途端、夏の魂が抜けた。太陽も蝉も入道雲もクリームソーダもとしまえんもあの子の揺れるミニスカートも皆一斉に死んだらしい。夏が何処へ行こうが投身自殺を図ろうが引き留めやしないよ俺は。グッバイファッキンサマー、蝉の啼声を聴く度に最後に泣いたのは何時だったかを考える。

九夏三伏の頃に誑かした胡乱な男はコンクリートの熱に溶けて消えた。所詮は偶像、初産は何時頃。息を吸うタイミングでマスクを小さく甘噛みするのが好きだ、誰かの事もこんな風に愛せたらと思うから。ははは。笑止。

急転直下の午後に訪れた薄鼠色のアパートに入居。散らかる言葉と本と紙巻煙草で黄色く染まった壁紙と、階段に転がる空の麦酒缶。都会の高層マンションに住む連中がいつかベランダから飛び降りるのを嬉々と待ちながら、インターネットを経由して邂逅した鬼才なる文筆家達と下から眺める日々を、愉楽と呼ばずして何と言えようか。

服 酒 音楽 吉祥寺在住 色々な事に興味があります

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