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メルカリ

夜の国道を上から眺めたことがある?俺はある。国道沿いに建つマンションの四階から眺める夜の国道。あれは百万ドルの夜景より世界最先端の電子光学が映すイルミネーションより手術室のLED天井照明よりも眩しくて煌びやかで美しかった。きっと俺たちが未だ知らない場所を目指して向かう大型トラックや四つか五つ列を成して走る夜間タクシー。月が車の背面に反射し、屈折して目の奥深くまで差し込んでくるから、さながら湖面を眺めているような感動さえ得られる。窓を開ければ風が四階から顔を覗かせる俺の頬を掠めて会釈を交わしてくれ、アブストラクトな景色を何時だって与えてくれる。俺はそういう景色を一等愛しているし、それが身を以て体験できる故郷があることを誇らしく感じている。

白黒の鍵盤を叩く指が何時の間にかアルファベットと記号が並んだキーボードを叩いている。音色はない。カタカタと独り言みたいに無機質な音が堅実な振りをして鳴るだけで、曲も奏でられなければ歌だって唄えない。湿った指の腹が鬱陶しい。白々しい。日々は染まり切るなよと言い聞かせながら生活をしている。六畳で弾いた八十八の白黒鍵盤に今更思いを馳せている。

国道と白黒鍵盤、三つ折りにして履いたスカート、花火みたいな音して散った爆竹。結局何が綺麗で、何が汚物であるかは皆知っているし皆持っている。美学とは何か問い質す頓智なサブカル大学生の自己顕示欲に祝福あれ、思春期の衝動をメルカリで売った。

服 酒 音楽 吉祥寺在住 色々な事に興味があります

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