#

忘れてくれるなよ

『厭世詩家と女性』ときいたら俺は俺とあんたが並んで立ってるところを想像するよ。ずいぶん涼しくなった。結局あんたの前では一度も着なかった洋服に袖を通して、あんたの光のない目とか、体の輪郭のことを考えるよ。ゆっくりと重力に敗北していく裸体の哀感。赤なら赤のまま、青なら青のままで。最近は尾崎翠を読んで、樋口一葉まで遡って、明治大正期の女流作家に思いを馳せている。命がけで筆を執ってた彼女たちの話を読んでいると、やっぱりさぁ、あんたの顔が浮かぶんだよね。おかしいね。いままで見たどんな雲の形にも似ていない雲が浮かんでた。死にたいと思った。あんたなら笑うだろうけど。