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プリーツスカートの影を追う

指先でしがらみを器用にほどき、溶かし、最初から何事も無かったかのような平常心で前を行く。彼女は人生の台本を辿っている。表面上をひとつひとつ悠々と歩いている。決して寄り道はせず、口を挟むことさえ許さない。諭すように、促されるようにページをめくる。

崩されることのない直線のプリーツは美しかった。規則正しく左右に揺れる。烈しさのある色はとてもたくましく、日光を浴びながら強く生きようとする赤い薔薇を彷彿させた。けれど、強さを纏っても心の脆さはそう簡単には変わらない。枯れた花弁がばらばらと散っていく姿にひどく動揺した。真っ直ぐな棘が心臓を突き刺す。一瞬の鋭い痛みがありとあらゆるところで駆け巡る。傷口は塞がらず、ジンジンと鳴り響き、頭痛を呼び起こす。紙の縁で指先を切るような切り傷を無数に掻き集め、じわじわと蝕んでいく。実際に人差し指は轢かれていたけど傷はもう消えていた。

あの日から台本も途切れていた。白紙が、空白が続いた。言葉が消え、悠々と歩く姿を見られなくなっても、目を奪われた色が自然と僕を繋ぎ止める。続きは書かない。探しもしない。先を逝った影を追うのは少し後になる。