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忘れる死

鈍重に歪みのかかった灰みたいな空とか、無鉄砲に光り散らかしやがる電飾とか、先端恐怖症患者の大量虐殺兵器みたいな氷柱とかが騒がしく胸壁を叩いたり引っ掻いたりする、冬が心底嫌いです。春の嘘みたいに腑抜けた…

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神様がくれたもの

僕のふくらはぎにはおっぱいがある。 いや、何、こんな書き出しで始めたからって、別に気が狂ったわけじゃない。確かに、今月家計が苦しいとか、毎日退屈だとか、毎夜ごとの歯軋りのせいで右の下の奥歯のエナメル質…

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食餌

食べることが苦手である。「好きだけど苦手」という感覚は誰しも持っていると思うんだけど、至極それに近い感覚。 十年前に摂食障害を患ってからというものの、どうも真面に食事を楽しめない。 酒の席であれば自分…

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無頼と社員

仕事を一度手放して、大学院に入ろうかと考えている、という話を父親にしたら、ほとんど当惑した様子で、しかし結構はっきりとした言葉で反対された。眉間にしわ寄せて半ば目を伏せながら、少し首を傾げるあの仕草。…

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天国で暮らそう

死後は天に召されよう。 こんな科白を日常で放てば、次の日からあだ名が「ジーザス」になったり、「釈迦マン」になったり、「天竺小僧」になったりするかもしれない。でもそんなことに負けたりしないで、ともかくみ…

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旅行っていうより

来月名古屋へ遊びに行く。2年振り! うれしい! 楽しみ! とか言うと、名古屋出身の友人に「そう言ってくれるのは嬉しいけど名古屋の何が好きなの…」と呆れられるわけだが。名古屋、いいじゃん。東山動物園はで…

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メルカリ

夜の国道を上から眺めたことがある?俺はある。国道沿いに建つマンションの四階から眺める夜の国道。あれは百万ドルの夜景より世界最先端の電子光学が映すイルミネーションより手術室のLED天井照明よりも眩しくて…

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うちに

困窮、と書くと少々大袈裟だが、ともかく、僕も人並みにお金に泣かされてきた一人である。一社会人としてカウントできるかどうかはさて置いて、自分の飯を自分で確保できるようになってからは、ようやくお金に泣かさ…

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忘れてくれるなよ

『厭世詩家と女性』ときいたら俺は俺とあんたが並んで立ってるところを想像するよ。ずいぶん涼しくなった。結局あんたの前では一度も着なかった洋服に袖を通して、あんたの光のない目とか、体の輪郭のことを考えるよ…

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かみしめて

咀嚼が好きだ。 「よく噛んで食べなさい」とはあまり言われずに育った。餅を喉に詰まらせて死ぬなといった程度の忠告しか受けなかった気がする。それよりも箸の持ち方を教える方に我が両親は尽力していた。 十代の…