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かみしめて

咀嚼が好きだ。 「よく噛んで食べなさい」とはあまり言われずに育った。餅を喉に詰まらせて死ぬなといった程度の忠告しか受けなかった気がする。それよりも箸の持ち方を教える方に我が両親は尽力していた。 十代の…

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牙の生えた動物

先日、水族館でウツボのクッションとサメの置物を買った。また我が家に動物が増えた。満足である。今より広い家に住めたら、私より大きい虎のぬいぐるみとか、ワニのぬいぐるみとかが欲しい。ソファ代わりになるよう…

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新屋敷 1

1. たとえば、「忘れられない友人の話をしてください」と、暇な誰かに聞かれたとする。おれはそういう時のためにとっておきをいつでも出せるように用意してあって、それはこんな風に始まる。 22歳の7月だった…

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酌に捧ぐ

俺は何だかずっと胸が張り裂けそうだよ。って囁くお前の額に万札ぐらいはくれてやる。アイスティーを飲んだ後の午後の夕立は不自然に柔らかかった。静謐に揺れる陽炎の中でお前だけがめらめらと燃えていたね、欠伸を…

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アルコール

身体がアルコールを受け付けないというのは淋しいことだ。これまでの人生、いわゆる微酔というのを経験したことがない。常に素面か酩酊のどちらかである。飲み方が下手くそというのはあるだろうが、それにしても意識…

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ク・キュウ

九月に入った途端、夏の魂が抜けた。太陽も蝉も入道雲もクリームソーダもとしまえんもあの子の揺れるミニスカートも皆一斉に死んだらしい。夏が何処へ行こうが投身自殺を図ろうが引き留めやしないよ俺は。グッバイフ…

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散歩(徘徊)

あ・る・こー♪ あ・る・こー♪ どうもこんにちは! 私は元気、鮭いくらです! ちょっと歩こうかな、で1時間は平気で歩く、くらいに散歩が好きです。人には徘徊と言われますが。はあ、目的地のない散歩って徘徊…

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エンターキーに馳せる

これでいて結構キーボードには思い入れがある。青春の半分をコイツに叩き込んできたのだから、否が応でも情が沸くというもので。いや、美談にするのはやめよう。率直に言えばめんどくさいこだわりがある。 キーボー…

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断酒をしていました。三ヶ月ほど。病院で「少し肝臓の数値悪いですよ」と言われたのがショックで。まだ二十二歳の乙女が肝臓を労ってやらなきゃいけないなんて、嗚呼。自粛で飲みに出かけることもなかったので、まあ…

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MONO・マニアック

小学生の頃、屑みたいな消しゴムを宝物のようにして筆箱に蒐集している奴がいた。それは本当になんでもない、誰かが失くした小さい消しゴムの使いさしで、共通点といえば角が取れていることと、全体的に黒ずんでいる…