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77億のうた

生きていくことはきっと辛いことだ。僕はそれを曖昧にして生きるつもりはない。けれどきっと人の一生は、絶望してしまうほどに辛いものでもない。そう信じて生きてきたし、今でもそう信じている。
今この瞬間に、遠い異国の地で祈りを捧げる少女がいる。雨続きの島国で、紫煙をくゆらせながら毒突く若い男がいる。交通事故で死ぬ人がいる。この世にはじめて生を受け、祝福と共に沐浴をする乳児がいる。差別に苦しむ人がいる。極彩色の風を受けて、人生の意味を問う人がいる。僕がいる。あなたがいる。僕と同じ風に考えて、僕と同じ風に書く人がいる。僕が誰かを書く時、誰かもまた、僕のことを書いている。
生きていくことは辛いことだ。けれど人の一生が、常に77億分の1であるなら、僕もあなたも、間違いなくかけがえのない存在だ。だから僕は余すところなく書く。あなたが苦しんでいることを、あなたが幸福に満ちていることを、僕はよく知っている。だからそれを書く。書いてあなたがこの世にいることを示す。誰のためにもならず、何者にもなれない人間の一生が、それでも77億分の1であることを、僕は一生疑わない。僕がいるからあなたがいる。途方もない大きさのパズルの1ピース、それが人間だ。欠けてはならない存在だ。だから僕は書く。

テオ・ 金丸

テオ・金丸です。コーポ湊鼠管理人。

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