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人が住んでる。

もったいないなあ、と思った。
良いものを書く人がいるのに、彼ら彼女らは悉く発信媒体に依存している。サービスの提供というシステマチックな事象ひとつで、彼ら彼女らの傑作は永遠に読めなくなってしまう。
さみしいなあ、と思った。そしてすべてがそこから始まった。

さて、このアパートメントも今日で丸一周年を迎えた。はじめにことわっておくが、このアパートメント、もといウェブサイトは、おれの力で成り立っているのではない。ここに入居する文筆家の面々、そのエントリーの一つ一つに支えられている。大家、管理者というのは便宜上の呼称に過ぎず、このアパートメントの主役は疑う余地も無く鮭いくらであり、丸橋十二月であり、翳目であり、みづ水屑である。恣意的な人選から始まったにせよ、縁があってここに集った彼、彼女らはみな、尊い文筆家たちである。この場を借りて、いや、貸主がこの場を借りてというのもおかしいが、ともかく、謝辞を述べさせてほしい。ありがとう、ありがとう。ありがとう!

どこぞの地方都市に住む、ドブから出てきた中卒男のはかない趣味に、こうして付き合ってくれることの名付けがたい幸福と感謝の念を、インターネット越しでは半分も伝えられないのが歯がゆくてならない。なあ、いつかみんなで飲みにいこうな。支払いは全部おれがやるから。こういうの、今はもう流行らないか。

読むのは良い。書くことはもっと良い。ワールド・ワイド・ウェブの都市に、小さなアパートメントが建っている。そこにはこういう人たちが住んでいて、皆それぞれ生活している。おれに出来ることは、入居者全員の幸福を真剣に祈ること。そして、今のこの気持ちを決して忘れないこと。それと、二度とサーバー料金を滞納してサイトをダウンさせないこと。

入居者たちの筆の運びを見守りつつ、コーポ湊鼠は二周年目を迎えます。

コーポ湊鼠 – 人が住んでる。

テオ・金丸です。コーポ湊鼠管理人。

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