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クリアランス

uri gagarn / Clearance

頭に浮かんだもの:

午前4時の窓から差し込むやけに青白い日光。糊のきいたワイシャツ。肌寒い夕方。真新しいステンレスの輝き。古ぼけたステンレスの濁り。自分の影がむっくり起き上がって自分の体ぴったりに収納される、懐かしい夏の日と冬の日の逆光。うだりながら通り過ぎるガード下。寂寥感の中にある耳鳴り。埃っぽい畳貼りの部屋。ギターを弾く佐藤くんのうなじに宿る正体不明の思想。血管と体温と大脳新皮質と海馬と冷えた肺。無精髭。潔白を主張する大人たちのスーツの裾に集まった皺。セーターに絡まる正体不明の透明な糸くず。外気温に反して妙に汗ばむ手の平。乾いた唇。長いまつ毛。海の向こう。錆びた鉄柱の足元に咲くしなびれた蒲公英。それを揺らす物憂げな9月の風と9月の心臓。生きていくには到底必要のない霧雨。空間に裂傷を残していく航空機の爆音。空にできた痣。顔も知らないたとえばあなたの、声にならない号哭。それを聞くおれ。冷えた手と手の握手。生活の残響を持ち寄ってみんなで街に残した余韻。それが街鳴り。

テオ・金丸です。コーポ湊鼠管理人。

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