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十二月一日前夜

冬のするどい空気の中で、星を見ている。すぐにオリオン座を見つける。どうにかして一句詠みたいような、そんなことをするのは無粋のような、曖昧な心境で相変わらず星を見る。何か鳥の囀りが聴こえる。奥の方から街鳴りが聞こえる。そのほかは静寂で、家々の軒先に灯るわずかな光は死んだように黙っている。LEDの街頭だけが、今の詩情にそぐわない暴力的な光量を路面にぶちまけている。おれだけが生きているように思う。炬燵で安眠を貪る妻も愛犬も、はす向かいに住む喫茶店のマスターも、みんなが死んで、おれだけが一人取り残されたような錯覚がある。これが冬だと実感する。なにもかもすべてが死に、温度という温度はすべて持ち去られ、灰色のくぐもった、あるいは透明な質量だけが残される。レジュメの余白。深呼吸の青。冬。ここだけが冬。

テオ・金丸です。コーポ湊鼠管理人。

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